宗教法人の提出書類 連載第218回

「触らぬ神に祟りなし」という言葉がある。ある物事に関わると面倒で、災いが起こるかもしれないので、そっとしておくという意味だ。というわけではないと思うが、情報公開が進んだ世の中で、あたかも「聖域」のように扱われている領域がある。その代表例が、警察・外交・防衛に関わる情報だが、他にも「聖域」がある。それは、宗教法人が自治体や国に提出した書類だ。過去にも自治体が保有する提出書類の公開の可否をめぐる議論があった。いま、それが国を舞台に再燃している。

制度の多様性 連載第217回

ずいぶん昔のことだから、多くの人は忘れてしまい、若い人は知らないかもしれない。情報公開条例の最大の特色は、自治体が先導・主導したことにある。その結果として、条例の内容に多様性があることを、今回は取り上げたい。それは、目的に知る権利の保障が明記されているか否かだけではない。実際の解釈運用に大きな影響を及ぼす非公開情報の規定ぶりも、条例により大きく異なる。また、規定ぶりは同じだが、同じ内容の行政文書の公開の可否が、自治体により異なることは珍しくない。

「公知の事実」の公開 連載第216回

屋上屋を重ねるような、なんだかおかしなタイトルである。法律上の意味はともかく、一般的には「公知の事実」とは誰もが知っていることを指す。その事実はすでに知れ渡っているのだから、改めて公開する必要はない。だから、情報公開制度を使って、「公知の事実」の公開を求めるようなことは、あり得ない話のように思える。ところが、実際には「公知の事実」の公開が求められたり、それどころか非公開になるような例もある。いったい、どういうことなのだろうか。

大臣日程表の即日廃棄 連載第215回

先日、実に興味深い記事があった。AI(人工知能)がさまざまな分野で活用されていく中で、「人命や経済損失につながる分野では、『なぜその結論を出したのか』が人間には分からないことが大きな課題になっている」というのだ(朝日新聞19年5月5日)。そして、AIにも説明責任が求められるという記事の流れに思わず苦笑した。では、翻って、私たち人間は説明責任をきちんと果たせているのだろうか。そのようにAIに問いかけたら、彼・彼女は何と答えるだろう。

公益目的の制度利用 連載第214回

先日ある会合で、情報公開制度の利用にかかわる難問が話題になった。営利目的の利用とともに、マニアと思われる市民の利用の多さに悩む自治体もあり、現場の意欲を削いでいるというのだ。いつごろからだろうか、自治体の担当者から同様の悩みを聞くことが多くなった。ただ、制度利用の質は、請求する側のモラルやセンスの問題であり、請求を受ける側としてはどうしようもない。そもそも情報公開制度は目的の良否を問わない仕組みのため、悩みを解消する手立てはないようにも思われる。

「保護」の見きわめ 連載第213回

このほど警察庁は、18年に児童虐待で検挙した件数が1380件、被害を受けた児童が1394人にのぼることを報道発表した。いずれも過去最多の件数だ。このうち死亡児童数は36人で、18年の111人をピークに減少し続けてはいる。しかし、依然として尊い命が犠牲になっていることには変わりない。こうした中で、千葉県野田市で10歳の女児が虐待で死亡したと思われる事件が起きた。彼女が発したSOSを周囲の大人たちが受け止め、迅速かつ的確な対応をするどころか、正反対の対応をしたことが問題になっている。

捜査照会への対応 連載第212回

ポイントカードの大手「Tカード」の運営会社CCCが、捜査照会に応じて個人情報を警察に提供していたことが報じられた。同社によれば、18年9月末のカードの会員数は約6800万人だという。提供された個人情報は、会員の基礎的情報にとどまらず、商品・サービスの購入履歴や獲得したポイント情報も含まれていたという。利用者が多く、取り扱いに注意すべきセンシティブ情報が多く含まれていることから、令状なき個人情報の取得に対する社会的関心が高まっている。

継続は力なり 連載第211回

「制度は永遠なんです」、先進的な情報公開条例を制定した自治体の首長から、そんな言葉を伺ったことがある。公選制のため首長の任期はいつ終わるかもしれない。しかし、良い制度をつくれば、自分の「命」を越えて生き続ける。ただ、この制度の宿命として、誰も利用しなければ、たとえ良い制度があっても意味がない。市民が制度を積極的に使うことで、制度の良さは磨かれていき、透明で公正な行政の実現に近づく。こうした好循環は「言うは易し行うは難し」であることを、いつも痛感している。

「権利の空白」への対処 連載第210回

18年6月に民法が改正され、22年4月から成人年齢が18歳に引き下げられる。飲酒・喫煙は現在の20歳が維持されるが、18歳成人は権利の主体となり、結婚・契約に際して保護者の同意が不要となる。情報公開及び個人情報保護条例における未成年者の扱いは、自治体によって異なる。しかし、少なくとも高校3年生は、条例に基づく開示請求が可能になる。こうした権利拡大の一方で、「権利の空白」ともいえる事態が進行している。それは社会の高齢化とともに進行し、条例制定当初には予想してなかった新たな課題である。

論外の不正入試 連載第209回

あまりにもひどい有様に接したとき、私たちは論外という言葉を使う。しかし、今回、発覚した私大医学部の不正入試は、この一言で片づけてはいけない無数の問題をはらんでいる。私の本業は予備校講師であり、医学部受験生と接する毎日を送っている。彼ら・彼らの苦労や努力を知っているだけに、この問題を簡単にやり過ごせない。そして、同時に、情報公開と個人情報保護を専門に活動してきた立場からも、これを看過するのではなく、しっかり論じたい。