論外の不正入試 連載第209回

あまりにもひどい有様に接したとき、私たちは論外という言葉を使う。しかし、今回、発覚した私大医学部の不正入試は、この一言で片づけてはいけない無数の問題をはらんでいる。私の本業は予備校講師であり、医学部受験生と接する毎日を送っている。彼ら・彼らの苦労や努力を知っているだけに、この問題を簡単にやり過ごせない。そして、同時に、情報公開と個人情報保護を専門に活動してきた立場からも、これを看過するのではなく、しっかり論じたい。

障害者雇用の水増し 連載第207回

2年後にパラリンピックが開催される日本で、障害者に対する裏切りともいえる行為が密かに横行していた。国や自治体における障害者雇用の水増し問題である。法律が定める雇用率の帳尻さえ合わせればいいという発想に、障害者はもちろん、多くの市民が憤慨した。そこには、日本社会に根強くある建前と本音との使い分けがみえる。建前として法律は守るけれども、本音では障害者雇用を進める気持ちはない。そんな国にパラリンピックを開催する資格などない。

メモという隠ぺい 連載第205回

情報公開制度には大きな抜け穴がある。それがメモだ。最近のいくつかの出来事によって、これが恣意的に扱われ、結果的には行政情報が隠ぺいされること改めて実感した。周知のようにモリカケ疑惑をめぐっては、真相追究の手がかりになる重要なメモの存在が明らかになった。その一部は公開されたが、肝心なメモはまだ闇の中にある。また、神戸市のいじめ自殺でも学校側の聴き取りメモが隠ぺいされていた。メモは市民や当事者の知る権利を奪い、行政の説明責任を堕落させる。

「情報反故」の闇 連載第201回

政権の正当性と信頼性を大きく損なった公文書改ざん問題。これを「情報反故」問題と名づけたい。反故とは不用なものを捨てることであり、約束・決まりを破ることを意味する。改ざんされた公文書は、政権にとっては不用、いや有害なものだった。だから、誰かが公文書管理の約束・決まりを破って改ざんした。これにより14もの決裁文書中の重要情報が捨てられた。改ざん真相は現段階では闇の中だ。しかし、これが政権を守るために行われたことは間違いない。保護の対象を誤った「情報反故」に他ならない。

温故知新の大切さ 連載第192回

前文部科学省事務次官が「行政を歪める」と言わざるを得ない事態が次々に明らかになっている。不正を防ぐべく設けられたはずの諸制度が骨抜きにされ機能不全に陥っていることが、事態の異常さを物語っている。諸制度とは、行政の公正性と透明性を確保するための行政手続法、情報公開法、公文書管理法等である。これらがことごとく無視されている現状に対して、私たち市民は嘆き、つぶやくことしかできないのだろうか。いや、過ちを繰り返させないために、まだやれることはある。

忖度の見える化 連載第190回

早くも今年の流行語大賞が確実されている言葉が忖度である。首相夫人の口添えもあり、学校法人森友学園に対して、国有地が不当に安く売却されたとの疑惑(以下、「国有地売却問題」)が取りざたされてきた。常識的にはあり得ない事実が次々に明らかになる中で、問題の核心をつく言葉として用いられてきたのが忖度だ。忖度による利権政治が横行する事態に対して、情報公開を強化して解決できないか。そんな「制度」の試論を以下に記したい。

子どもが伝える魅力 連載第189回

情報機器の発達は既存のメディアに致命的な打撃を与えた。象徴するのが新聞の発行部数の激減だ。また、雑誌の休刊・廃刊も相次いでいる。紙のメディアの必要性と可能性は少なくないが、その将来を楽観できない。こうした中で、同様に紙と活字を中心としてきた自治体の広報も変化を迫られている。しかし、いろいろな意味で役所らしく旧態依然としていて、次の一手がみえない。情報提供の一手段でもある広報の魅力を、どうすれば取り戻すことができるのか。

情報公開のコスト 連載第186回

またしても、公開請求にかかわる情報漏えいが発覚した。事件の舞台は秋田県湯沢市。市職員労働組合が市議会に対して異例の「公開質問状」を提出したことに端を発する。各地で問題になった情報漏えいは政務活動費をめぐるものだった。しかし、同市の情報漏えいは、いささか様相を異にしている。背後にあるのは公開請求にかかわる職員の負担感であるからだ。漏えい行為は論外ではあるが、情報公開のコストをどのように考えるかは、意外に根が深い問題である。

請求者情報の漏えい 連載185回

全国各地に広がる政務活動費の公開請求は、もう一つの副反応を引き起こした。複数の議会事務局や他の行政機関が、請求の事実に加えて請求者の報道機関名や氏名を議員に情報提供していたのだ。そもそも情報公開制度は、請求を受けた側が公開の可否を客観的に判断するものである。誰が何のために公開請求したのかは判断には不要である。それどころか、こうした不法行為が横行すれば、制度利用に委縮効果を及ぼし、条例が保障する権利の侵害になる。なぜ、そんなことをやったのか。

政活費の適正化 連載184回

地方議会の会派・議員に支出される政務活動費(以下、「政活費」)の不正支出が全国各地で問題になっている。本連載でも、たびたび取り上げてきたテーマである。「もういい加減にしてほしい」というのが、私だけでなく読者の実感だろう。一連の不正の発端にもなった富山市議会では、定数の約1/4の13名が辞職し、前代未聞の規模の補欠選挙が行われることになった。そのための費用は約1.2億円と報じられている。政活費のムダ使いが、もう一つのムダ使いを生み出した構図だ。