代理人の「本人」開示 連載第221回

個人情報保護条例は、当該個人の開示、訂正、削除、利用停止等の権利を保障している。多くの場合、起点となるのが本人開示請求権だ。これにより自己にかかわる個人情報の記録内容を知り、必要に応じて次のアクションに展開することもできる。これまで特に何の区別もせずに本人開示と表現してきた。しかし、最近になって、代理人による請求は、カギカッコをつけて「本人」開示と表現すべきかもしれないと考えるようになった。それは、法定代理人や成年後見人等の代理人による権利の代行が、被代理人の利益に反する例が散見されるからだ。

「節度」のある調査を 連載第219回

地域で暮らし、働く人たちが、良好な日常生活や社会生活を支援していくことが、自治体の主要な役割である。この役割をしっかり果たしていくために、1人ひとりの生活に関わる個人情報の取得・利用が必要な場合も少なくない。生活に対する強い不安感から、自己に関する個人情報の取り扱いに不信感を抱く例もある。その時に必要なのは、自治体職員の「節度」のある行動だ。価値観が多様化した社会における「節度」とは、法令やそれに基づく仕組みを硬直的に運用することではない。支援する相手の視点に配慮した柔らかな姿勢をもちたい。

「公知の事実」の公開 連載第216回

屋上屋を重ねるような、なんだかおかしなタイトルである。法律上の意味はともかく、一般的には「公知の事実」とは誰もが知っていることを指す。その事実はすでに知れ渡っているのだから、改めて公開する必要はない。だから、情報公開制度を使って、「公知の事実」の公開を求めるようなことは、あり得ない話のように思える。ところが、実際には「公知の事実」の公開が求められたり、それどころか非公開になるような例もある。いったい、どういうことなのだろうか。

「保護」の見きわめ 連載第213回

このほど警察庁は、18年に児童虐待で検挙した件数が1380件、被害を受けた児童が1394人にのぼることを報道発表した。いずれも過去最多の件数だ。このうち死亡児童数は36人で、18年の111人をピークに減少し続けてはいる。しかし、依然として尊い命が犠牲になっていることには変わりない。こうした中で、千葉県野田市で10歳の女児が虐待で死亡したと思われる事件が起きた。彼女が発したSOSを周囲の大人たちが受け止め、迅速かつ的確な対応をするどころか、正反対の対応をしたことが問題になっている。

捜査照会への対応 連載第212回

ポイントカードの大手「Tカード」の運営会社CCCが、捜査照会に応じて個人情報を警察に提供していたことが報じられた。同社によれば、18年9月末のカードの会員数は約6800万人だという。提供された個人情報は、会員の基礎的情報にとどまらず、商品・サービスの購入履歴や獲得したポイント情報も含まれていたという。利用者が多く、取り扱いに注意すべきセンシティブ情報が多く含まれていることから、令状なき個人情報の取得に対する社会的関心が高まっている。

「権利の空白」への対処 連載第210回

18年6月に民法が改正され、22年4月から成人年齢が18歳に引き下げられる。飲酒・喫煙は現在の20歳が維持されるが、18歳成人は権利の主体となり、結婚・契約に際して保護者の同意が不要となる。情報公開及び個人情報保護条例における未成年者の扱いは、自治体によって異なる。しかし、少なくとも高校3年生は、条例に基づく開示請求が可能になる。こうした権利拡大の一方で、「権利の空白」ともいえる事態が進行している。それは社会の高齢化とともに進行し、条例制定当初には予想してなかった新たな課題である。

論外の不正入試 連載第209回

あまりにもひどい有様に接したとき、私たちは論外という言葉を使う。しかし、今回、発覚した私大医学部の不正入試は、この一言で片づけてはいけない無数の問題をはらんでいる。私の本業は予備校講師であり、医学部受験生と接する毎日を送っている。彼ら・彼らの苦労や努力を知っているだけに、この問題を簡単にやり過ごせない。そして、同時に、情報公開と個人情報保護を専門に活動してきた立場からも、これを看過するのではなく、しっかり論じたい。

虐待情報の共有化 連載第208回

18年3月、東京都目黒区で、両親から虐待されていた5歳の女の子が亡くなった。事件の詳細はたびたび報じられてきたが、そのたびに多くの人が心を痛めた。私もそのうちの一人だが、こうした悲劇を防げなかった無力感に落ち込んだ。児童虐待の構造と要因は複雑で、解決のための「特効薬」はない。いくつもの対策を重ねていき、それらを通じてようやく低減できるものだ。対策の一つになり得るのが虐待情報の共有化である。ただ、その道は容易ではなく、なかなかにけわしい。

障害者雇用の水増し 連載第207回

2年後にパラリンピックが開催される日本で、障害者に対する裏切りともいえる行為が密かに横行していた。国や自治体における障害者雇用の水増し問題である。法律が定める雇用率の帳尻さえ合わせればいいという発想に、障害者はもちろん、多くの市民が憤慨した。そこには、日本社会に根強くある建前と本音との使い分けがみえる。建前として法律は守るけれども、本音では障害者雇用を進める気持ちはない。そんな国にパラリンピックを開催する資格などない。

eポートフォリオ 連載第206回

日本の大学は大きな転機に直面している。少子高齢化が進むことで18歳以下の人口が減少し、大学の存立が危うくなる。すでに大学の4割が定員割れとなり、統廃合も視野に入ってきた。この「2018年問題」と軌を一にして、20年度から大学入試改革が始まる。改革は「大学入試センター試験」を「大学入学共通テスト」に変えるだけではない。入試とともに大学と高校の教育のあり方を大きく改める「高大接続改革」が進められてきた。この中でにわかに注目されてきたのがeポートフォリオである。