NPO法人「ぐらす・かわさき」のニュースレターに書いた文章です。
2011年6月、税制改正法と改正NPO法が成立し、NPOに関する寄付優遇税制が導入されることになりました。前者はNPO等に対する寄付の税額控除を、後者は制度の対象となる認定NPOの範囲拡大を定めています。
寄付の税額控除とは、NPO に対する寄付から2,000円を引いた金額を基準に、所得税は40%、住民税は10%(都道府県民税4%と市町村民税6%の合計)を還付するという仕組みです。たとえば、私がぐらす・かわさきに12,000円を寄付したとします。このうち所得税4,000円、住民税1,000円の計5,000円が還付されるのです。
この税額控除を受けられるのが認定NPOですが、これまでは認定要件となるPST(パブリック・サポート・テスト)のハードルが高く、ぐらす・かわさきも断念した経緯があります。いま全国には40,000を超えるNPOがありますが、認定NPOは215団体しかありません。これでは税額控除の効果が期待できないため、改正NPO法によって認定要件を緩和したのです。
従来は「事業収入の1/5以上の寄付」を要件の一つとしていました。認定に必要な寄付額は、NPOの事業収入によって大きく異なります。改正NPO法はこれを改め、「3,000円以上の寄付者100人以上」という絶対基準を導入しました。この寄付実績が2年あり、他のPST要件を満たしていれば認定NPO、つまり寄付優遇税制の対象になれます。これが「本認定」です。
一方、これでは2年待たなければ認定NPOになれず、寄付優遇税制の効果がなかなかあがりません。そこで導入されたのが「仮認定」の仕組みです。たとえ現段階では絶対基準を超えていなくても、とりあえず「仮認定」として、その後の3年間で同等の寄付実績があれば「本認定」を得られるというものです。これにより認定NPOの件数が一気に増加すると思われます。
以上のような寄付優遇税制によって、NPOに対する寄付が拡大するかもしれません。ただ、ここで忘れてならないのは、認定NPOになれない小さなNPOや任意団体の存在です。これらの市民活動団体の資金確保をどうするかが今後の課題です。
ぐらす・かわさきが設立準備を進めている「かわさき市民ファンド(仮称)」は、こうした小さなNPO等への資金仲介の役割を担うことで、課題解決をめざすものです。ここでの仲介とは、認定NPOに市民からの寄付を集め、それを小さなNPO等に分配していくことです。そうすることで、寄付優遇税制の効果を地域社会のすみずみに行きわたらせたいのです。
阪神大震災があった年は「NPO元年」と呼ばれました。そして、東日本大震災があった今年は「寄付元年」と呼ばれ始めています。実に多くの市民、企業・団体が誰かに命じられるのではなく、自ら進んで募金をしました。寄付という社会参加を多くの人が経験した年に、NPOの寄付優遇税制が成立したことに、何か運命のようなものを感じます。
ぐらす・かわさきは寄付によって「命」を授かったNPOです。寄付を軸とした人と人とのつながりを、もっともっと強くできるように、その「命」を輝かせたいですね。