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総合型選抜対策講座 小論文問題集

慶應義塾大学法学部FIT入試A方式2022年

口頭試問(法律学科)

【問題】
日本では自殺は犯罪ではありませんが、これを手助けする行為は犯罪にあたります。その ため、治る見込みのない重病患者が自殺を望んだとしても、医師の援助を受けることが困難 です。数年前、そのような患者が日本から外国に渡り、自殺を援助する団体の医師の協力を 得て自殺した事例がありました。その国では、一定の範囲で自殺を援助する行為が認められ ているからです。このような日本の現状の是非について意見を述べてください。

【解答例】
自殺を手助けした事例として記憶に新しいのは、京都市在住のALS患者を二人の医師が殺害した事件だ。患者は闘病生活の苦しさから、強く自殺を望んでいたという。二人の医師は、チューブで栄養を胃に直接送る「胃ろう」から薬物を注入したとされ、嘱託殺人で逮捕、起訴されている。このように日本では自殺を手助けする行為は犯罪になる。しかし、外国には安楽死を認める国もある。そこで、同じことが行われれば犯罪にはならない。
国内では違法だが、国外では適法となる。こうした日本の現状に私は強い違和感を覚え、国外での行為を禁止すべきだと考える。行為の善悪の基準を定めることが法律の役割の一つである。善悪の基準は明確で、かつ一貫していなければならない。仮にケース・バイ・ケースで善悪を定めて良いことになれば、人間や社会は混乱するだろう。行為者の意思で人を死に至らしめることは、動機は何であれ殺人に他ならない。特定の行為に対する正義が国の内外で大きく異なる二重基準は、法律に対する信頼を損なう。
確かに、国外での行為を禁止すことは難しい。しかし、刑法のように国外での犯罪を処罰する余地や方法はある。また、禁止するための根拠規定が現行法になければ、法律を制定または改正すれば良い。もちろん、それだけでなく自殺を強く望む人に対する社会的支援の拡充も必要だ。行為の事前と事後の両面で対処しなければ、問題の真の解決は難しい。(589字)