○講座で使用したパワポシート PDFファイル
○sli.doを使ったQ&A
Q:知り合いに大学生がいないので、入試のこと何も分かりません。基本的な入試のことも話してほしいです。どんな受験方法があるのか。あと、中学生の今から意識しておいた方がいいことはあるか。大学に入るのが大変と聞いて、附属高校人気が高いので、普通に高校から受験して大丈夫か心配です。
A:大学受験は多様化しています。1つの大学・学部でも複数の選抜方法があり、大学入試を一口に表現できないのが実情です。漠然とした志望でいいので、行ってみたいと思う大学の入試概要をネットでながめてみてください。そして、その前に必要なのが、いったい何を学びたいのか、どんな仕事をやりたいのか…という自分自身との対話です。家族や教師の役割は、こどもの成長に合わせて、その促しや引き出しをしていくことです。
【参考】多様化する大学入試:上智大学の例
Q:国立と私立の受験対策について、共通点と相違点を教えていただきたいです。
A:共通テスト(現センター試験)の利用など共通する面もありますが、両者は相違点の目立ちます。まず、入試教科数は原則として国公立5教科、私立3教科で、前者が広く浅く、後者が狭く深い印象があります。ただ、国公立でも3教科型があったり、総合型選抜(現AO)では特別の選考方法があるなど、実際には多様です。
Q:推薦入試やAO入試を考える場合、高校生活ではどのようなことをどのレベルまでやっておいたら良いのでしょうか?
A:大学入試改革によって、推薦は学校推薦型選抜にAOは総合型選抜に名称が変わります。両者に共通するのは評定平均で学力(というか授業に対する関心に・意欲)をはかり、一定の評定があることが出願資格になります。また、後者はコミュニケーション力を中心に、主体的に学習に取り組む態度がより重視されます。それが主体性、多様性、協働性で、狭い意味での「勉強」を越えた経験からの学びが大切になります。好きなことに取り組み、そこからさまざまなことを学びとる力が大切になります。
Q:論文を書く力を伸ばすにはどのようなことをすればよいのでしょうか?
A:自分が考えたことを整理して、他人にわかるよう順序よく説明した文章が論文です。そのため書く力以上に考える力を伸ばすことが重要です。ポイントは物事を理解・思考する順序を経験し、身につけていくことです。料理が思考力養成につながるとボクが考えるのは、そのためです。
Q1:国立大学の推薦に今まで合格した方は、どんなことをされていた方達なのでしょうか?特別な活躍をされていた方ばかりなのでしょうか?
Q2:AO、推薦入試について、違い、対策(面接、小論文、資格、ボランティアなど)、対策を始める時期、どんなタイプの生徒がどこに合格しているかなどの実例を是非お聞きしたいです。
Q3:高校生活でやっておいた方がいい課外活動、ボランティア、インターンシップ、アワードなどをお聞きしたいです。東大peakについてもお聞きしたいです。
A:一部の難関大学では総合型選抜の出願資格や重視項目に特定のアワードや資格をあげる場合があります。ただ、そうした社会的評価の高い経験だけが評価されるわけではなく、日常的な経験の中からの学び・成長という自己評価を重視する選抜が少なくありません。以下に掲載した自己推薦書の例が典型的です。また、こうした経験からの学びが入試で評価されたのは、そこに彼女らしさや適性・将来性があったからであり、誰もがボランティアをやればよいというものではありません。重要なのは他でもない「わたし」なのです。
○自己推薦書の例
旭川医科大学医学部のAO入試(募集人員40人)は、北海道の地域医療を充実させていくため、学力だけでなく「意欲、能力、適性、将来性等」をはかるため小論文や討論面接(ワークショップ)など多様な方法による選抜を行っています。このAO入試に合格した生徒さんの自己推薦書を掲載します。一見すると、自己の経験を中心とした「物語(私がたり)」になっていますが、その中に、下記のアドミッション・ポリシーがしっかり反映されている点に注目してください。将来、地域医療を担い得る「芽」を感じさせる自己推薦書に仕上がっています。
○旭川医科大学医学部(医学科・看護学科)のアドミッションポリシー
Ⅰ.『医師・看護職者としての適性』
①病める人に限らず,他者を思いやる心を持つ学生
②人命に限らず,全ての生命の尊厳を理解し,社会的規範・道徳に沿って,自らの行動を律することのできる学生
③他者を尊重し,良好な関係を築くことのできる社会的能力を持つ学生
④幅広い分野の教養を身につける努力をしている学生
⑤最新の知識や技術を身につけるため,学習し続ける学生
Ⅱ.『地域社会への関心』
①自らの居住地域及びその住民に対して愛着を持つ学生
②広い地域(北海道や他の都府県,国,世界レベル)の事柄に対して関心を持つ学生
③医療に限らず,広く地域社会一般の事象に関心を持つ学生
Ⅲ.『自らが問題を見つけ解決する意欲と行動力』
①新たな事象に対して,自ら持つ知識・技術を独創的な視点から論理的に応用し,自らにとって未知の問題点を抽出できる学生
②未知の問題点を解決するために行動し,新たに学ぶことのできる学生
③豊富な知識量のみならず,他の領域への応用など,自らの持つ知識を活用することのできる学生
○自己推薦書の例(旭川医科大学2013年度AO入試合格)
私は貴学のアドミッション・ポリシーの中で特に、「地域社会への関心」と「自らが問題を見つけ解決する意欲と行動力」があると胸を張って言うことができます。なぜなら地域の問題を自ら見つけ、解決策を一人で実行したからです。私が今まで様々な経験をしてきた中で、特に学んだことが多くそれらが将来医師として働く際に、ある課題に対して大いに関心をよせ多様な働きかけを図るという点で役立つと考える活動について述べたいと思います。
私が住むあいの里という所は東西に小川が流れ、公園が多く自然にあふれています。イベントも多く、夏には祭りなどの催しがたくさん開催され活気に満ちています。しかし街路灯が設置されていない所が多く、夜になるとたびたび不審者が目撃されています。その上4年前にはあいの里の公園で自殺がありました。その後しばらく警察官が町全体を巡回する物々しい状況になり、雰囲気も暗くなったように思えました。そこで私は雰囲気向上のために自分に何ができるか
考えたことをきっかけに社会の中の一人として役立ちたいと思い、「住み良い環境づくりのために」という課題を立てあいの里の雰囲気向上に努めました。
まず雰囲気向上に必要な要因を具体的に把握するため、様々な年齢層の住民20人にあいの里で不快に思うことを尋ねました。そこで得た回答と自分が不快に思っていることに対し、それぞれの解決策を考えていきました。そこで気をつけたことは、不快を埋め合わせるだけでなく快適なものに変えることです。例えばこんな例があります。ある地下鉄の駅周辺の路上駐輪がひどく、自転車が歩道にはみ出し通行の妨げになっていた所がありました。そこで迷惑していた町内会の方々がそこに花壇を設置したところ、路上駐輪が解消されたばかりでなく、住民や地下鉄を利用する方々の花壇整備をはじめとする環境整備の意識が高まり、ごみのポイ捨てもなくなったそうです。この様な更なる効果が期待できる方法を目指しました。そして実行できたことが主に3つあります。
1つ目はごみ箱と吸殻入れの撤去です。それらは遊歩道に設置されていました。その遊歩道は住宅地と商業施設や鉄道の駅を結ぶ、通行人の多い道です。そのごみ箱と吸殻入れは、ごみや吸殻のポイ捨て防止のために設置された物だと思いますが、ごみ箱から常にごみがあふれ出し遊歩道に散乱し、吸殻入れからは消火が不完全なたばこの煙が立っていました。この状態では通行人や周辺住民の健康を損ないかねないと思い、あいの里のまちづくりを担う地区センターを訪れました。ごみ箱と吸殻入れの撤去を望んでいることをお話しすると、他にも撤去を求める声が多く寄せられていることを知りました。そこで、ごみ箱と吸殻入れを含めこの遊歩道を管理する土木センターを訪れ、地区センターでの話をふまえて撤去をお願いしました。するとおよそ1カ月後、撤去が実現しました。遊歩道の近所の方に撤去された後の遊歩道の利用状況を伺うと、今まで敬遠してきたその遊歩道をよく通行するようになったそうです。
2つ目は街路灯の設置です。住宅地の前に街路灯のない道がありました。その道は地域の小中学生の通学路にもなっていますが、夜には非常に暗くなっていました。明るい道は事故防止だけでなく防犯にもつながると考えた私は、土木センターに前述のごみ箱と吸殻入れの撤去と併せてその道への街路灯の設置をお願いしました。すると3カ月後にその道に街路灯が設置されました。その道は夜でも安心して歩行できる道となりました。
3つ目は歩道の升花壇の整備の呼びかけです。整備が疎かな地区があり、升花壇の雑草が歩道まで伸びて道幅を狭め、中にごみが捨てられていました。そこで升花壇に花を植えることでごみの投棄を防ぎ、かつ花を観賞しながら快く通行できると考えました。そしてその地区の町内会長に升花壇への花植えを提案し、回覧板に活動紹介とあいの里で最も升花壇が美しいと言われている地区の写真と住民の方々へ整備のお願いを記載したプリントを入れていただきました。するとその地区は、私が通るたびに升花壇が美しくなっていきました。町内会長によると住民の方々の美化意識が高まり、ゴミステーションの周りにも花が植えられ利用マナーも向上したそうです。
これらが評価され、地域紙に私の活動が紹介されました。
この活動はおおよそ順調に進めていくことができました。しかし私は一人で活動していたため、個人で行えることの限界を時々感じました。例えば個人の要望だけでの街路灯設置の実現は難しいです。ですが町内会の協力を得て近所の住宅地の回覧板に街路灯設置の要望を呼びかけるプリントを入れていただき、団体からの要望を加えることで解決していきました。ただマナーの向上は個人が意識することが重要であり、呼びかけなどの啓発だけでははっきり効果に表れにくい難しさを実感しました。
この活動前は不快に思うことがあっても特に発信せず、区役所などが改善してくれることを望んでいるだけでした。しかし「住みよい環境づくりのために」という課題を立てるに至ったことで自分が貴学のアドミッション・ポリシーである「地域社会への関心」と「自らが問題を見つけ」る能力があり、具体的な解決策を考え主に前述の3つのことを実行し、他者や地域から評価をいただいたことで自ら見つけた問題を「解決する意欲と行動力」があると思いました。さて、この活動を通して生活環境と健康は大いにつながりがあると思い始め、興味をもちました。住み良い環境は日々の生活上のストレスを和らげ、病の予防につながると考えます。住民の健康を支える生活環境づくりも医師が担う役割の一つにあると思います。私が将来北海道で医師として働く際には、この活動の経験を活かし住み良い環境づくりを率先して行い、住民の方々の健康を病の治療だけでなく生活環境からも支えていくことで、地域医療に貢献していきたいと考えています。健康を全人的に支える医師になるために、医療知識と技能だけでなく人体と健康の有機的な関連性をぜひ貴学で学びたいです。その気持ちは誰にも負けません。(2499字)
○参考
「思考力と対話力を強くする」(朝日新聞・北海道版2018年9月24日)PDFファイル
駿台の小論文対策(早慶大を語る2017年版)PDFファイル